恋愛の形
モスクワではカウチサーフィンで知り合ったマリアとサワといううら若きカップルのお家にお世話になった。
もともとカウチサーフィンのアカウントは持っていたのだけれど使ったことはなく、世界一周の旅に出てからいつか使ってみようと思っていたのだ。
カウチサーフィンとは〜で〜なサービスである。
気になった人はwikiで調べてみたらだいたいお分かり頂けると思う。
wikiのリンクを貼るほど私はマメな人間ではないし、タダで有益な情報を提供するほど優しくはない。
でも気が向いたら、"〜で〜なサービスである。"の部分を書いてみようかなと思うミーハーな人間でもある。
まぁ、簡単にいうとカウチサーフィンとは、"旅行者がタダで現地の人のお家に泊まることのできるサービス"
である。
そのカウチサーフィンを初めて利用したのがモスクワだったわけだが、マイファーストカウチサーフィンエクスペリエンスはとてもとてもいい思い出となった。
以下馴れ初め
マリアから私のお家に泊りませんか?というオファーがくる。聞くところによると彼女は日本語を勉強しているらしかった。
プロフィール画像を確認したところマリアがとても可愛かったので即OKを出す(やましい気持ちしかない)
待ち合わせ場所に向かい合流する。やはり可愛かったのでテンションがあがる。
家までの道中マリアは彼氏と同棲していることが発覚する。
萎える。
お家に到着する。マリアの彼氏サワと対面する。
サワは感じのいい好青年であったので、邪な気持ちしか持ち合わせていなかった自分が情けなくる。
こんな風にして始まったモスクワでの生活。
2人はまず、お手製のボルシチで私を出迎えてくれた。
ボルシチとはウクライナ発祥と言われる伝統的なスープであり、材料に赤大根が使われているのでなかなかファンシーな見た目をしている。
お味の程はと言うと、うん、そうだな。
たくさん野菜が入った土の香りが芳ばしいうっすーーーーーーーーいコンソメスープを想像してほしい。
お分かり頂けただろうか?
そして美味しいかどうかのコメントは差し控えさせて頂けると助かる。
マリアとサワはモスクワの大学に通う19歳の大学二年生で、マリアは政治学と日本語、サワは経済学と中国語を専攻していた。
なによりもまず私を驚かせたのは、彼らの勉強に対するストイックな態度である。
朝早く起きて、今日の授業の予習は当たり前。授業を終えて帰ってきたらその日勉強してきたことの復習。夕食を食べたら今度は語学の勉強とレポート作成。
といった感じで暇さえあれば勉強している。
夜遊びをすることは滅多にないらしく、お酒もほとんど飲まない。
私がビール飲みたげにソワソワしているのを見て付き合いで一杯飲んでくれる程度である。
テスト期間ぐらいしか学校に行かず、朝から晩までバイトに明け暮れ、稼いだお金は無益な飲み会に消えていくといった不毛な生活を5年近く送ってきた私にとって、彼らの勤勉な態度に頭が下がる思いであった。
でもそんな2人だって男と女なわけで、やることはやっているわけで。
ある朝、何の気なしにサワの首筋に目をやったらあられもないほど特大のキスマークが3つほどついてるのを目撃してしまったんですよ。
「あれ、サワその首のキスマークどーしたの?」
とここぞとばかりにいじり倒す24歳ニート。(たんなる僻み)
「あ、いや、え、その…」
としどろもどろのサワ。
「あれマリアがやったの?」と攻撃の手を緩めない24歳ニート
もはやなんて言ってるかわかんないけどものすごい恥ずかしそうにしてるマリア。
か、可愛い。。
ほどなくして、どっちが先に手出したとか、私はそんなつもりじゃなかったとかいう、親密な言い争いが始まったのでなんだか急にいたたまれない気持ちになってしまった24歳ニート。
(なにしてんだろおれ…)
もうね、単純に羨ましかったんですよ。2人の関係が。
朝起きる時間も一緒、ジムに行く時も一緒。
ご飯も一緒に作って、一緒に勉強して。
たまにどっちが皿洗いするのかで喧嘩して、さっきまで喧嘩してたと思ったらいつのまにか仲直りしてて。
ってゆーその関係が微笑ましすぎて、羨ましすぎて。
人の恋愛にとやかく口を出したり、自分の恋愛を俯瞰して眺められるほど大人になったわけじゃないけれど、2人の姿を見て、十代の頃の熱っぽさとか、ある種の危うさといった甘酸っぱい青春を思い出して単純にいいなぁって。
十代なら十代、二十代なら二十代といった、その時々でしかできない恋愛の形があると思うし、マリアとサワの二人のようにそういう恋愛の形を楽しんでいる人を見ると胸がソワソワするほど羨ましく思う。
友達そっちのけで、何をするにも一緒。そんな彼らの生活は彼らの年代にこそ相応しい。
と、今年25歳になるニートは思うのでした。