JUN KOBAYASHI

気の向くままに赴くままに地球をふらり

無題が時に何かを強く語ることもある

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文学なしに旅を続けることは、モノクロで一枚の絵を描きあげるようなものです

 

文学という名の色彩は私の感情、感覚、思考を色鮮やかに彩り、修飾し、それらをさらなる意識へと昇華させます

 

シベリア鉄道の三等車にはドストエフスキーがいたし
アドリア海の潮風が鼻腔を刺激した時そこにはサリンジャーいたし、
サンタエウラリア大聖堂の鐘が乾いた空気を震わせた時そこにはヘミングウェイがいたのです

 

私の旅はいつも言葉があった

 

言葉と共に移動し言葉と共に眠りに落ちた

 

言葉は私が見た景色をより鮮やかに彩り、私の

感情を優しく愛撫し、時に逆撫した

 

言葉が個人的経験を超越的なものにせしめたのです

 

旅のさなか、その土地で書かれた本を読むこと、その土地で育った作家の本を読むことは、何事にも変えがたい読書体験です

 

私はいまそんな機会を失ったのです

 

この喪失感はマリアナ海溝のごとく計り知れないものです

 

この先の旅は灯台の光を目指さずしてドロドロと黒く重たい大海原を進むようなものになるでしょう

 

私は君なしで旅を続けられないほどに弱っている

 

人はそれを失って初めてそれの本質を知るほどに無知極まりない


君はどこに行ってしまったんだい

 

Kindle

 

iPod失くした時よりも深い悲しみに暮れていますがかろうじて生きています

 

失恋した気分です

なにも手につきません

こんな時ばかりはスペインの美女も無力です

 

 そして私は、スペインの陽気な風とイスラミックな雰囲気が緩やかに混ざり合いせめぎ合う街グラナダを後にして、明日美味しいパエリアを求めてセビリャという街に移動します

 

アディオス