シベリア鉄道と国境越え
パスポルトォォォオ!!!!!
プーチンを3倍ぐらいデカくした(ように見えた)禿頭のロシア人職員がパスポートを見せろと要求した。
リンゴとバナナで朝ごはん済まし、ぼんやりと窓の外の景色を眺め(昨日から変わらぬ景色)
この先巡り会うであろうロシア美女との妄想A to Zを一通り楽しんだあと、一眠りしていた時である。
例のプーチンはいきなりドアを開け放ち叫んだのだ。
パスポルトォォォオを見せろと。
いや、なにも叫ばなくてよくない?
てか舌巻きすぎじゃない??
こっち寝起きなんだし、おはようの一言ぐらいくれてもよくない???
でもそんな愚痴をこぼしてる暇もなかった。
もうなんというか、有無を言わさぬ雰囲気なのだ。
憲法上保障されている基本的人権など、ここロシアという国ではなんの意味もなさないのだというような具合で。
暴力という名の圧倒的権力を振りかざすをジャイアンに、ひみつ道具を献上するのび太みたいに私はパスポートをプーチンにうやうやしく差し出した。
プーチンはパスポートをパラパラとめくったり、ひっくり返したり、太陽の光に照らしたりしてじっくりとチェックしている。
何をそんなに眺める意味があるんだろう。単純な疑問である。
その間5分。
いや、冷静に考えると5分ってものすごく長いのだ。
どのくらい長いかというと、そうだな、小学校における帰りの会ぐらい長い。もっと言えば片思い中の大好きな女の子から日がな1日返信を待ってるぐらい長い。
パスポートを眺めるという行為に対し5分という時間をかけるのはそもそも時間の使い方を間違っているし、はっきり言って非効率的である。機械でピッとしてしまえば一瞬である。だって空港だってそうなんだから。
パスポートを5分もかけてチェックしてる間、プーチンはロシア語でなにかブツブツ呟いたり、無線で何か飛ばしたりしていて、なおかつその周りには麻薬探知犬が2匹ほどウロウロしているのだからこっちは気が気ではない。
これと言って特にやましいことはないのだけれど、ここまで大層な検査だとこちらも不安になってくる。
一通りのチェックが終わったのだろう。
プーチンは投げるようにしてパスポートを私に渡した。
並々ならぬ緊張感を5分もの間私に与えたあとプーチンはそれを投げるように渡したのだ。
激おこである。
今となっても腹立たしいが、ここで文句を言っても仕方あるまい。
話を先に進めよう。
そのあとも代わる代わるロシア人職員がやってきては、ありとあらゆる荷物を検査したり、ベッドをひっくり返したりと、忙しなさそうにしている。
その間3時間。
それもそのはず、彼らは同様の検査を乗客全員に対して行なっているのである。
最初の5分に文句を言ってた自分がバカバカしくなった。
そして最後に口をへの字に曲げた神経質そうな小太りのおばさん職員がパスポートを機械でピッとやって国境審査終了である。
そうその、口をへの字に曲げた神経質そうな小太りのおばさんは機械でピッ、てしたのだ。
機械でピッ、て。
ロシアなんて来なければよかった。
この時の率直な感想である。
ちなみに国境審査の間トイレ使えません。
これからシベリア鉄道に乗ろうと考える方お気をつけくださいませ。
使えないと言われると用を足したくなるのが人間の性でございます。
(初めて有益な情報を提供できた気がする。気がするだけなのだけれど)