JUN KOBAYASHI

気の向くままに赴くままに地球をふらり

モンゴルで遊牧民と風になった話

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 餃子♪炒飯♪回鍋肉♪るんるん♪といった程度にしか考えていなかった中華人民共和国において、精神と大腸に予想以上の深手を負い、息も絶え絶え疲労困憊、精疲力尽、満身創痍で降り立ったウランバートル国際空港。深夜12時。

 

(生半可でない身体的精神的ダメージを我が身に与えた中国という国についてのお話はまたの機会に)   

 

 牛乳が染み込んだボロ雑巾のような身体で恰幅のいいモンゴリアンの群衆を掻き分け、必死の思いでドライバー見つけ出し、予約しておいたゲストハウスに向かう。

 

(宿は事前に予約しておくものといった当たり前のことを中国で学んだのだ)

 

走り出したその瞬間突き刺すような寒さを我が身を襲う。あぁ、寒い。予想はしていたがひどく寒い。気温は3度。北京との温度差は25度近い。

頼む、頼むから窓を閉めてくれ。ドライバーさん。隣で子羊のようにガタガタと震えてる私が見えぬのか。

 

そんなことはお構いなしで、私が日本人だとわかるや否や、TOYOTAの車は最高だ。ヒュンダイはまだまだ。ロシア製なんてもってのほか。などなど、身振り手振りを交え、いや、彼は運転中であるので、身振り手振りを交えちゃいけないのだが、車談義に花を咲かし、非常にご機嫌な様子である。

 

日本人だからといって皆が皆車に詳しいと思うなよ。と心の声を圧し殺し、HAHAHA! GRATE! COOL! と巧みに相槌を操りその場をやり過ごす。

 

昔から人の話を聞いてるふりをするのは得意なのだ。

 

(それが原因で怒られたことは数知れず)

 

ものすっっっっっごい勢い(メーターが壊れていて速度不明)で車を走らせること、20分ほど、ウランバートル市街地に到着。草原のど真ん中に突如として浮かび上がる巨大なビル群に、冷え切った心と身体が踊りだす。

 

まもなくしてゲストハウスに到着し、チェックイン。

もう出会うこともないであろうドライバーさんに今生の別れを告げる。

 

(結局窓は開け放たれたままであった)

 

心の中で中指を立てたのは言うまでもない。

 

私は12人部屋のドミトリーを予約していたのだが、チェックインが遅かったのもあって、シングルルームに通して頂くことに。しかもお値段据え置き。日本円にして約700円。なんと親切なオーナさんであろう。

 

ははん、シングルルームに通しといて後から高額な料金を請求つもりだな。その手には乗るまい。と1度でも疑ってしまった自分自身に嫌気が差しつつ、死んだようにベッドに倒れ込む。

この旅で初めて人の優しさというものに触れ、ピアノ線のように張り詰めていた緊張の糸がパチンと音を立てて切れてしまったようである。

 

翌朝、街の喧騒で目を覚まし、ふと時計に目をやると朝の8時。普通の旅人であれば、このタイミングで起床し街に繰り出すのであろうが、私は違う。なんといったって意識低い系旅人なのだ。眠い時は欲求に身を任せ寝るのが1番。二度寝が許される幸福を心の底から噛み締めいざ再びの眠りへ。

 

夢か現か、トントンとドアをノックする音で目を覚ます。声にならない呻き声をあげ、時計に手を伸ばすと、針が指し示すは昼の1時半。

 

完全に寝過ぎである。いくら意識低い系旅人であるからって昼の1時半まで寝ることは許されない。そんな時間まで寝る人間、それはもはや旅人ではなくただのニート。

 

旅人失格である。

 

軽い罪悪感に苛まれつつ、ぬるいシャワーを浴びながらぼんやりと思考する。

 

はて、、、4日ほど前まで私はしがないフリーターだったよな。と。

 

昼から朝まで(ここ重要)馬車馬のように働き、稼いだお金は飲み代に消えていくといった不毛な生活を1年以上も送っていた人間がたった4日そこらでまともな生活リズムに戻れるわけがないよな。

 

だったら昼の1時半まで寝てしまうことも至って正常なことであって、なんら罪悪感を感じる必要性もないんじゃないか?

 

と、半ば強引に自分自身を正当化し、罪悪感から解き放たれた私は、日がな1日ベッドでごろごろするのであった。

 

そんな風にして幕を開けたモンゴルでの生活。

 

旅に出たからといって、18歳の頃から長年培った腐りきった生活習慣、生活リズムがそう簡単に変わるわけはなく、ダメ人間は旅に出てもダメ人間であるという事実に変わりはなくて。

でもだからといってそんなダメ人間っぷりを否定するのでもなく、

ダメ人間はダメ人間なりに自分自身のペースで旅の仕方、旅との付き合い方を学んでいけばいいのだ。

 

そう、これは堕落しきった生活からの緩やかなリハビリである。